和紙の原料は多種多様ですが、
ここでは越前和紙に使われる基本的な原料をご紹介します。

こうぞ
Broussonetia kazinoki × B. papyrifera

クワ科の落葉低木。
皮の部分(靭皮繊維)を使います。
繊維長は6~15mm前後と、三椏・雁皮・木材パルプより長く、繊維どうしがよく絡み合うため強靭な紙になります。
繊維幅は麻類や木材パルプより細く、雁皮や三椏より太い。
奈良時代から和紙の原料としてもっとも多く使われ、幅広い用途に使われる和紙になります。

三椏 みつまた
Edgeworthia papyrifera

ジンチョウゲ科の落葉低木。
皮の部分(靭皮繊維)を使います。
繊維長は3~4mm前後。
繊維は柔軟で楮に比べて細く、繊維幅・繊維長などにおいても雁皮繊維との共通点が多く見られます。紙質は緻密でにじみが少なく書画用紙に使われます。また穏やかな光沢を持ち、襖紙などに重用されます。印刷適性にもすぐれ、高い品質を誇る日本銀行券(紙幣)の原料としても役立っています。

雁皮 がんぴ
Diplomorpha sikokiana

ジンチョウゲ科の落葉低木。
皮の部分(靭皮繊維)を使います。
繊維長は4~5mm前後。
栽培が難しく、おもに野生のものを採取します。
雁皮の採取量が減っているため、越前では栽培に取り組んでいます。
繊維が扁平(平たい)なので、きわめて光沢のある緻密な紙となり、精細さの求められる銅版画や、繊細な表現を必要とする「かな書道」の揮毫用紙に適しています。
江戸時代には雁皮紙は「紙王」といわれ、上質の紙として現在も称賛されています。

あさ
Cannabis sativa L.

大麻・苧麻・亜麻などの総称で、古代において紙の製法が伝来した時には主要な原料でした。皮の部分(靭皮繊維)を使います。
和紙原料の中でも、繊維長は最も長く10cm以上にもおよぶので短く切断して利用します。現代では主原料として使われることは少なく、補助原料として配合されることが多い。
越前では日本画用紙などに使われています。

マニラ麻 マニラあさ
Musa textilis

バショウ科の多年草。
葉鞘(葉の下部が茎を抱いてさや状になっている部分)を使います。
繊維長は5mm前後。
繊維長や繊維幅は楮や三椏に似ているため、代替原料として主原料または副原料に使われます。
原料の叩解を調整することで、ふんわりとした風合いの楮紙風の紙や、パリッとした三椏紙風の紙となります。

木材パルプ

針葉樹または広葉樹の木の部分(木質部)の繊維を使います。
洋紙の主原料です。
繊維長は2~5mm前後。
靭皮繊維と比べて、安価で大量生産に適しており、主原料または副原料としておもに機械漉き和紙に使われます。手漉き和紙にも使われることがあります。

黄蜀葵 トロロアオイ
Abelmoschus manihot

アオイ科の一年草。
根から得られる粘液を「ネリ」として使います。
漉き槽の中で粘液を紙料と一緒に混ぜ合わせることで、粘りによって繊維どうしがもつれ合うことなく分散して長時間水中に浮くようになり、紙を漉くときに繊維の絡み合いを助けます。
「ネリ」は紙漉きには欠かせない補助剤です。

ノリウツギ
Hydrangea paniculata

アジサイ科の落葉低木。
樹皮に粘液を含み、トロロアオイと同様に「ネリ」として使います。
トロロアオイのように温度の影響を受けることが少ないので、夏季にも安定して用いることができます。